ラテン語 despectus (despise:見下す の過去分詞)
受験英語では「……にもかかわらず」といえば、"in spite of" なのだが、TOEICでは突然 "despite" という単語が現れる。少しお堅い言い回しになるので、ビジネス英語には必須というわけだ。
受験慣れ(馴れ)した方ならば "despite = in spite of" と丸暗記してしまえば、別段どうということのない話なのだが、少し突っ込んでいくと両者の関係は意外に複雑だ。
"Despite his importance, Mr. Smith is very friendly."
(スミス氏は、地位が高いにも関わらず、とても親しみやすい。)
など、現代では良い意味でも使われることが多い前置詞であるが、本来の意味を考えると、このような使い方は微妙な嫌味を含んだニュアンスになる。
"despite" は、今ではあまり使われないが、そもそも名詞としてつかうと「侮辱、軽蔑、悪意」などの意味がある。どうやら当初は、"in despite of" (……の侮辱・悪意の中にあっても) というイデオムで使っていたようだ。
つまり、「こんな最悪な状態に追い込まれているにもかかわらずやりぬく」という、周りの悪意に耐えて乗り越えようとしている状態を表していたようだ。
そして、"in despite of" の省略形として、"despite" のみで、「……にもかかわらず」という意味で使われ始める。
"despite" という一つの単語の中に、【前】「……にもかかわらず」と、【名】「悪意」というあまりにも異なった意味が混在するのは不自然だったのだろう。「……にもかかわらず」という前向きな意味で使われ始めた "despite" から「悪意」などの悪い意味は外され、代わりに頭音消失した "spite" を使うようになる。つまり、もともとの "despite" は、本来の意味をなくしてしまい、代わりに "spite" が使われるようになるのだ。
さらに、"spite" も、古い "despite" のときと同じルールで "in spite of" として、「……にもかかわらず」という意味で使われるようになった。したがって、同じ意味で "despite" と "in spite of" が使われるようになった。
そう考えれば、古い "despite" が、少々お堅い言い回しで、"in spite of" が後発の現代的な言い回しであるというのもなんとなく理解できる。
単語: despite, spite