doc- 教える + -or 人を表す接尾辞
"doc-" で始まる単語で思いつくものが "doctor" 。これも、語源を知れば納得する。「教える」に "-or" を付けて人にしているのだ。自らの豊富な知識を「教える人」が "doctor" というわけだ。初出は14世紀。18世紀には「治療する」とか「医者を開業する」という動詞としても使われるようになった。"document" が動詞として使われるようになった時期も18世紀である。18世紀に何かブームがあったのだろうか。
さて、確かに医者は患者を診察し、病状や治療法を教えてくれる。
医者といえば、1996年にアメリカのドラマ「ER緊急救命室(Emergency Room)」がNHKで放送されて話題になった。日本で放送されるぐらいだから当然といえば当然なのだが、本国アメリカでは1994年にNBCで放送が始まってから、かなりのブームを巻き起こしたようで、その後医者や病院を題材にしたドラマが雨後の筍のように現れたと聞く。
「ER」は、原作が映画「ジュラシックパーク(Jurassic Park)」や「ディスクロージャー(Disclosure)」で有名なマイケル・クライトン(Michael John Crichton)の「五人のカルテ(Five Patients)」ということだから、もともと話題性が高かったと思われる。とはいえ、1994年に始まって2008年の今も尚ブームが続いているのだから、よほど内容が面白くないとこうはいかないはずだ。
日本でブームを起こした医者のドラマといえば「白い巨塔」だろう。1963年から1965年まで雑誌「サンデー毎日」に連載された山崎豊子の長編小説が原作だ。
1965年に田宮二郎主演でラジオドラマ化、1966年に田宮二郎主演で映画化、翌年に佐藤慶主演でテレビドラマ化されている。但し、多くの日本人の記憶に残っているのは、その翌年1968年に三度目となる田宮二郎主演でテレビドラマ化された作品ではないだろうか。ドラマの放映が残り2話となっていた1978年12月28日に、主演の田宮二郎が猟銃自殺をしたことで、かなり強烈な印象が残っている。
その後も1990年と2003年に、村上弘明、唐沢寿明の主演で、テレビドラマ化されている。それぞれ放送時はかなりの話題になったが、白い巨塔といえば田宮二郎のイメージは変わらない。
また、1993年に放送された「振り返れば奴がいる」というドラマも医者を主人公にしており、放送時は人気があった。
これら、医者が主人公のドラマが話題になる原因の多くが、一般の患者が普段接することのない医者や病院の裏の世界を垣間見れることにある。単に病気や怪我の症状や治療法を「教える人」ではなく、多忙な医療現場で医療ミスを起こしたり、金や権力にしがみつく医者などを生々しく描いている作品に人気が集中する。14世紀の昔から知っている "doctor" ではなく、20世紀、21世紀の本音の "doctor" を見たいということだろうか。
ちなみに、学位としての「博士号」は「…の職務」という意味を表す接尾辞 "-ate" が付いた "doctorate" である。博士号を取得している人を指して、「彼はドクターだよ」というのは正しいが、「彼はドクターを持っているらしいよ」などと言うのは厳密には間違っている。ましてや英語で、"He has a doctor." などと言ってしまってはいけない。お医者さんを持ち上げているか、お抱え医師でも雇っているかのような表現になってしまう。もちろん、相手の方が話の流れで察してくれるだろうとは思うが。
単語: doctor, doctorate
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